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日本語力の話は別問題だ。 [語学]

相方の帰省に付き合って石川県に来ているので、読む新聞は北國新聞。今朝の社説(12月29日付)を読んで、こういう論調って多いよな、全国紙は知らないけど、地方紙なんてこんなものなのかな、と少々げんなりした。題して「英語を英語で教える 落ちこぼれが多く出そう」。今日中ならここで読めるけど、permalinkはない。ここなら記事一覧が見られるけど、そこから先は携帯電話用の有料サービスだって。ケチだなあ。自らの言論を広める方が大事だと思うよ。僕の故郷の新潟日報なら無料で過去社説も読めるのに…。(因みに、新学習指導要領についての社説は12月23日。全体についての話なので、英語についてはこうなったと触れているだけですが。)

北國新聞の社説、前半の、生徒にも教師にも落ちこぼれが多く出そうだ、というのは誰もが思うであろうことで、ここには特に異論はない。問題は後半だ。「…日本語の授業の中身を濃くしないと、英語の圧力に負けて、日本語の優れた機能や陰影が維持できなくなるという問題もある」という“寝言”に始まって、バイリンガルの作家水村美苗の近著『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』(筑摩書房)を引き合いに出している。論点が、途中で英語教育から日本語力の問題にすり替わっている。

日本語力の話は別問題でしょう。これではまるで、日本が母語教育を英語教育に依存して行ってきたかのようだ。実際そうだったという考え方も結構流布しているけれども、筋違いも甚だしい。全員が英語教育を受けるようになったのは太平洋戦争後だけれども、それ以前に教育を受けた日本人の日本語力が低いなんて論調は見たことがないし、実際そんなことはないはず。

最近の若者の日本語運用力の低下が問題になっていて、それがこの社説の後半の念頭にあるのかも知れないが、日本語力の低下が本当に存在するのかどうかは怪しいものだし、仮にそうだったとしても、教育分野の中で責めを受けるべきは国語教育であるはず。更に言えば、教育に原因があるのかというのも疑問だ。要は、社会の中でのコミュニケーションの需要に応じた運用能力になっているだけなんじゃないだろうか。



話は別になるけれど、今月中旬のポーランド出張中、僕が研究発表をした後の coffee break で、聞いていたポーランド人の一人から、日本での英語教育の状況について質問された。僕は、12歳から学校で学ぶ、ちょっと前までは選択科目で「事実上の必修」だったが、必修化された、というような返事をした。

12歳、それは遅いですねえという反応が返ってきた。ポーランドでは6歳だったか7歳だったかから第一外国語を学び、その後第二外国語もやるのだそうだ。順序や言語は選べて、ドイツ語・英語ないし英語・ドイツ語の順でやる人が多いとか。かつてはもちろんロシア語を最初にやるパターンが多くて、その人(多分僕と同年代)もそうだったとのこと。

日本で英語を始める年齢を早めることになったが、母語の能力に悪影響があるのではなどの理由による反対論があると言ったら、この技術の時代にそんなこと言っている人がいるの?みたいな反応が返ってきて、うーん、そうですね…としか答えられなかった。現に小学校の最初から外国語をやっている国の人には、あまり早くから外国語をやると母語に悪影響があるという議論は確かに理解しがたいだろうな…と思う。

と言うか、僕自身も、小学校で英語を始めることで母語に悪影響があるという懸念の根拠が実はよく分かっていない。言語構造の距離の違いの問題なのか?という感じが少しだけしているのではあるけれど…。ポーランド語-英語と日本語-英語では明らかに違うだろうから。

なお、僕は小学校で英語をやることにどちらかというと懐疑的です。但し、懸念の内容は、教師がいないということと、最終的な効果の見通しが分からないということ。あと、英語の利便性はあるとしても、数ある外国語の中で英語に限定するのは問題だという考えもある。ポーランドのように2つやって、そのうち1つが英語というぐらいが妥当じゃないかという感じ。

僕自身はラボ・パーティというところで、小学校3年から週1回英語で遊んだ後で中学に入って英語の勉強が始まったので、小学校で英語に触れさせちゃいけないとまでは思わないけれど、僕が英語で飯を食う身になれたのは、それを小学校からやっていたことではなく、このラボを通して中2の夏休みにアメリカにホームステイに行くことが中学に入るときに既に決まっていたことにより、「英語ができなきゃ大変なことになる」という危機感を持って英語の勉強を始められたこと、実際のホームステイでそれまで習った程度の英語は使うことができて手応えを感じたこと、そのことでアメリカに心酔して、その後もモチベーションを高く保てたこと、などにあるのじゃないかなー、と感じています。

…北國新聞を枕にして、結局言いたい放題書いてしまったのかな。


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