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AmazonのKindle、印税70%に [ニュース]

キンドル「印税70%」の衝撃 不況の出版界には大脅威 : J-CASTニュース

1月22日に読んだ記事なのですが、やっぱり本を出している者からすると、ひとこと書いておきたくなりました。

ここ数日は、むしろアップルの iPad の方が話題になっているようではありますが、いずれにせよ、電子出版では著者の取り分が大きくなるということに違いはないですね。

この記事では、30%から70%に上げた、と書いてあるのですが、日本では、著者の印税は10%です。翻訳だと元の版元が取っていくので更に低い。一見、70%もらえれば著者は7倍儲かりそうなのですが、そんな甘い話ではないわけですね。それは、電子書籍が一体いくらで売られるのか、いくらで買ってもらえるのか、という問題です。

紙の本の場合、印刷・製本にお金がかかります。流通にもお金がかかります。物理的なモノですから、在庫になった場合のコストも織り込んで値段が付くでしょう。当然、本として出す前に編集者の手が入るわけです。実際には、制作コストを売れそうな部数で割って値段は決まるようです、特に少部数の学術出版の場合。

電子出版になると、印刷・製本という工程はなくなります。編集・装丁・レイアウトなどはするんでしょうけどね。流通は電子的なものですし、在庫は「1部」あれば十分なので、ほぼコストはゼロに近いでしょう。そんなわけで、本の値段自体、紙の場合よりもかなり安くなるはずです。

もちろん、電子ブックというハードを売って、電子書籍を流通させるしくみを作るのにお金がかかりますから、Amazon が「印税70%」と言っているのは、その部分の費用として、利益を含めて30%もらいますよ、ということですね。

個人的には、こうした電子ブックの「表現力」はどんなもんなんだろう、というのが最大の関心事です。グラフィックはもちろん、かなり特殊なフォントを用いた表現を必要とするので、果たしてこれはそいうものを満足させてくれるものなのか?付属CDの内容は、本のデータに含めて、画面のタップで聞けるとか、そういう機能もないといけません。

フォント表現なんかは、僕の分野の本をそういう本をあまり出していない出版社から出すと、[ ] が 〔 〕 になってしまったり、よく似た違う字に置き換えられていたり、そういうのをよく見るので、やはり心配です。アメリカの本では、英語以外の言語のローマ字表記から、アクセント符号やウムラウト記号が抜けたりしているのをよく見るので、アメリカ発のKindleやiPadに関してはそういう心配もあります。

僕の場合、値段や実入りがいくらになろうが、それを生活の足しにしようなんて考えていないので、むしろ気になるのは、電子出版のメディアとしての完成度というわけです。あと、電子出版が主流になってしまうと、相対的に値段の高い紙の本を出したくても出しにくくなるだろうから、それもちょっとイヤですね。可能ならば、実体のあるものとして読者にも触れて欲しいという気持ちがありますから。
 


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